桶屋さんの話

 とあるわがままなお姫様が、外国から世にも珍しい珍しい大きな魚を取り寄せるということで、その魚を泳がせる桶を作るようにとのお達しがありました。
 もちろん、普通の桶では入りきりませんから、特注で巨大な桶を作らなければなりません。ちょっとやそっとで壊れたりしないように頑丈に作る必要もあります。

 桶を納めたあかつきには、お城の御用達に取り立ててくれるということになり、桶屋も大張り切りです。


 桶屋は、作ったこともないようなサイズの桶を、長い時間をかけて苦労して作りました。ようやくおおまかに出来上がったその桶に、試しに水を入れてみます。
 水は、ザーッ、ザーッと勢い良く流れ込んでいきます。
 するとどうでしょうか。最初は順調に見えたものの、ところどころから水漏れが始まってしまいました。やはり、普段の桶とは勝手が違い、隙間ができてしまっているようです。
 水漏れは、小さいものも含めればかなりの数です。箇所によって、勢い良く流れ出るところもあれば、少しずつ染み出してくるところもあります。


 桶屋は、水漏れの箇所の一つ一つに隙間を詰め、周りを補強していくことにしました。しかし、修理していっても穴は無数にあるように思えます。しかも、さっき直したはずのところからまた漏れ出してしまうこともあります。
 これはもしかしたらタガの数や強さも調節しなければならないかもしれません。
 特に注意しなければならないのは、下の方にある水漏れです。今は小さい穴でも、水圧でどんどん広がってしまうことになるからです。


 必死で修理をしながら、桶屋さんは大切なことを思い出しました。
 この国では有名なわがままお姫様のご機嫌をもし損ねてしまったらどんな恐ろしいことになるか…。


 期限は2週間後。果して桶屋の運命は…?
「くだらないことしてないで勉強しろ」って?
おっしゃる通りです。